新しい上司はど天然|レビュー&感想・・・ギャグ&ライトBLで男性も見やすいほのぼの日常系アニメ

今回レビューする作品は、2023年10月から1クール放送された秋アニメ「新しい上司はど天然」。

原作はWebコミックサイト『マンガクロス』で連載されている漫画で、元はTwitterから人気に火が付いた作品なんだとか。

いわゆるイケメンキャラがたくさん出てくる作風のため、一般的には女性向けの作品に分類されると思うが、コテコテのBL系作品というわけではない。

濃密に男と男が恋愛をする作風ではなく、アニメ特有の近すぎる距離感による友達以上の関係を、コメディテイストな演出と和やかなエピソードで見せてくれる。

個人的にガチのBLはあまり好まないが、これくらいのソフトな関係性を描いてくれるなら大歓迎で、「新しい上司はど天然」も例に漏れず、とくに不快感や違和感を覚えることなく、最後まで楽しめた。

今日はそんな「新しい上司はど天然」の、感想及び評価レビューをしていきたいと思う。

設定・ストーリーについて

本作の主人公は、少し気は弱いが真面目な青年だ。

上司からのパワハラで体調を崩したため前の職場を辞め、新しい職場で、もう一人の主人公兼相手役でもある上司の部下になるところから物語が始まる。

そして、この上司がタイトルにもなっている「ど天然」キャラだ。各話のエピソードは、上司がドジでおっちょこちょいな言動をして、それに対して部下の主人公が軽くツッコんだり、そんな上司の姿に癒されて和む…という展開が繰り広げられる。

そして、主人公が上司の天然っぷりに和むと同時に、上司も自身のドジやマヌケさに気づいてテレる…という一連の流れを繰り返すうちに、2人はどんどん仲良くなっていき、他の同僚やかつてのパワハラ上司なども登場して、主人公は少しずつパワハラのトラウマを克服していく。

1話を見た時は、わりと出オチでワンパターンになりそうに思えたが、これが意外にもさまざまなパターンのドジっ子上司を見せてくれて飽きない。

ただ、リアリティという点では皆無だ。天然ボケの内容自体は、現実でもたまに目にする事があるネタが多いものの、良い年をした、しかも仕事がバリバリできるおっさんがここまでヌけている事はありえない。

しかし、それは現実での話だ。

これは漫画であり、アニメであり、創作だ。一つ一つのちょっと恥ずかしい天然行動は、作品内ではギャグとしてしっかり成立しており、爆笑はできないものの、クスリと笑えるキャラクターとして描かれていた。

作画・演出について

作画は全体的にあまりコストがかかっていないように見える。ただ、コメディテイストの日常アニメでゴリゴリに気合の入った濃い作画を見せられても目が疲れるため、ある意味正解だろう。

作風に合ったやわらかい線と配色、必要最低限の動き、そして顔だけは絶対に作画崩壊を起こさないようにしているあたり、省エネ作画の使いどころが上手い作品と言える。

演出に関しては、”間”の取り方が難しいギャグやコメディを、派手にやりすぎず抑えすぎずの良い塩梅で演出できていた。

ギャグは上手く見せる事ができれば作品への愛着や親近感を与える事ができるが、見せ方や演出を間違えてしまうと、視聴者を一気に冷めさせてしまうどころか、共感性羞恥心や不快感すら与えてしまう諸刃の剣。

「新しい上司はど天然」の場合は、ボケに対して激しくつっこむ作品ではないため、面白い!笑える!という感情よりも、楽しい!かわいい!という感情が先にくる見せ方で上手く演出できていた。

総評

普段あまり見ないジャンルの作品だったが、最後まで普通に楽しめた珍しい作品だ。おそらく、まったく期待をしていなかった事が逆にハードルを下げてくれて、「意外にも面白いじゃん」という感情に引き上げてくれたのだろう。

3話までに脱落する人は、おそらく序盤の天然ギャグによるキャラの掛け合いが合わない事や、会社や上司のキャラクター性が、現実と乖離しすぎている事が飲み込めない人だろう。とくに男性やサラリーマンほど、この違和感は拭いにくいと感じる。

つまりリアリティラインの問題だ。この作品は、いい歳をした社会人のお仕事アニメではない。あくまで会社が舞台であり、登場人物が社会人なだけであり、内容としてはきらら系でよく見る女子高生達の日常アニメと大差ない。

そういった作品のテイスト、ジャンル、楽しみ方などを、視聴者に意識させずに飲み込ませることができれば、もっと男性視聴者を獲得できたと思う。だけど、実際には視聴者の心を掴み、意識を向けさせるほどの勢いや没入感は無かったように感じる。

私自身も、リアリティの無い会社やサラリーマンの描写に最初は違和感を拭えなくて、自分からこの作品の楽しみ方に意識を寄せる必要があった。ただ、楽しみ方を心得てからは、毎週欠かさず見るくらいには楽しめた。

原作はたったの2巻しか刊行されていないわりに(※2023年5月時点)、発行部数は50万部を超えているらしく、ポテンシャルはかなり高い作品だと感じる。2期があれば是非続きを見たい作品だ。

作画・キャラ 2.5
脚本・構成 3.5
音楽・演出 3.0
総合 3.0

キャスト・スタッフ情報

【キャスト】
白崎優清:梅原裕一郎
桃瀬健太郎:西山宏太朗
青山光男:杉田智和
金城愛悟:福山 潤
白桃:下野 紘
【スタッフ】
原作:いちかわ暖「新しい上司はど天然」(秋田書店「マンガクロス」連載)
監督:阿部記之
副監督:河野亜矢子
シリーズ構成:横谷昌宏
キャラクターデザイン:安田京弘
総作画監督:安田京弘・中村深雪・岩崎令奈
プロップデザイン:福世真奈美
美術監督:田村せいき(アニメ工房 婆娑羅)
色彩設計:ホカリカナコ
色彩設計補佐:枝川 茜
CG監督:栗林裕紀
撮影監督:重家優子(EXPLOSION)
編集:廣瀬清志
音楽:中山真斗
音響監督:明田川 仁
制作:A-1 Pictures
【主題歌】
オープニングテーマ:フジファブリック「プラネタリア」
エンディングテーマ:Lenny code fiction「花束」
©いちかわ暖(秋田書店)/新しい上司はど天然製作委員会 
■公式サイト:https://do-tennen.com
■公式X:@do_tennen_anime
■公式TikTok:@do_tennen_anime

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